『改元』 畠山丑雄
『改元』
畠山丑雄 / 石原書房 / 四六判上製 / 232P
「君は今回の譲位についてどう思うかね?」
「龍の話じゃありませんでしたか?」
「そうだよ」久間さんは目を細め暗い光を溜めた。「ずっと前から私はその話しかしていない」
龍の夢が「私」を通過するとき、この国のもうひとつの姿があらわれる――
現代日本小説屈指の剛腕による、抵抗と革命の二篇。
改元の年の異動で山奥の町に着任した公務員「私」は、集落に伝わる惟喬親王が見たという龍の夢の伝説を追って、この国のもうひとつの姿を目撃する。(「改元」)
山あいの地主の一族に生まれた少年は、日猶同祖論を唱える父によって「世界の救い主」となるべく「十(じゅう)」と名付けられた。第二次世界大戦をまたいで繰り広げられる、めくるめく年代記。(「死者たち」)
目次
改元 003
死者たち 107
版元から一言
2015年、大学在学中に『地の底の記憶』で文藝賞を受賞しデビューした新鋭・畠山丑雄、待望の単行本第二弾。
マジック・リアリズム的手法と豊かな物語性、確固たる強度を持つ文体を具えた作家による抵抗と革命の二篇を書籍化。