『ブルターニュの歌』 J・M・G・ル・クレジオ
『ブルターニュの歌』
J・M・G・ル・クレジオ 著 / 中地義和 訳
作品社 / 四六判上製 / 228P
毎年家族で夏の数カ月間を過ごした、思い出の地ブルターニュ。
水のにおい、水の色、古城での祭り、土地の人々との交流……。
そして、戦時下に生を享け、戦争と共に五年を過ごしたニース。
母と祖母の庇護、兄との川での水浴、まばゆい日々の記憶……。
ノーベル文学賞作家が初めて語る幼少年時代。
そこは私の誕生の地ではなく、一九四八年から五四年まで毎年夏の何カ月かを過ごしたにすぎないが、どこよりもたくさんの感動と思い出をもたらしてくれた土地である。(…)われわれはブルトン人であり、どれほど時を遡っても、こうした見えない堅固な糸でぼくらはこの土地に結ばれているという考えとともに私は成長したからだ。
(「ブルターニュの歌」より)
私の心をかき乱すのはおそらく、歴史のこの部分だ。それは、戦争とは子供を殺すものであることを理解させる。戦時中に生まれた者は、真に子供でいることができない。(…)武器を運搬する子供は子供ではなくなる。その子は人生の別の年代に属することになる、別の時代に入ってしまったのだ、粗暴で、獰猛で、仮借ない時代に。大人の時代である。
(「子供と戦争」より)
目次
ブルターニュの歌
サント・マリーヌ/ル・ドゥールのおかみさん/路上にて/コスケ城/刈り取り/夜の彷徨/コロラドハムシ/戦争/海へ/引き潮/トルシュ崎/宗教/歴史以前に/神秘/ブルターニュは永遠に!/自治に向けて?/あるブルターニュの英雄
子供と戦争
訳者あとがき 幼少期をめぐる反‐自伝