『妻の温泉』 石川桂郎
『妻の温泉』
石川桂郎 / 講談社 / 文庫判並製 / 288P
家業の理髪店で理髪師として出発し、石田波郷門下で句作の道へ。
その後、横光利一に師事して小説を書き始め、55年に本書が直木賞候補作となる。
選考会では小島政二郎から「ホンモノのリズムが打っている」と絶賛されるが、他の選考委員から「エッセイではないか」「自然すぎる」と批判され、落選。
しかしその文章が放つ独特なユーモアと哀感が多くの読者を魅了しつづけ、「名文家」として根強いファンを持つ。
「氏の筆の巧妙な幻術に引っかかって(中略)一々事実であると鵜呑みにしないよう」(山本健吉「跋」)ご用心のうえ、この「不世出の作家」が編み出す小説の醍醐味をご堪能あれ。