『サラゴサ手稿』上巻 ヤン・ポトツキ
『サラゴサ手稿』上巻
ヤン・ポトツキ 著 / 工藤幸雄 訳
東京創元社 / 文庫判並製 / 400P
真正完全版では削除された逸話も多く、
物語の配列も大きく異なる真贋入り交じった妖しい世界
多くの異本や剽窃本が存在する
『サラゴサ手稿』だが、21世紀に入り、
真正版が特定されるに至った。
本書は、それまで最も信頼されていた版の
工藤幸雄による全訳である。
ポーランド貴族ポトツキが病床の妻のために読み切ってしまった『千一夜物語』の代わりに、毎日一話ずつ書きつづったのが本作ともいわれるが、いくつもの異本が存在し、謎に満ちた存在でもあった。近年その完全版がフランスで刊行され、岩波文庫に収録されたが、本書はその完全版刊行以前の、完全版とも異なる逸話も多く含む版の工藤幸雄全訳。
著者プロフィール
ヤン・ポトツキ (ヤンポトツキ) (著/文)
ヤン・ポトツキ
1761年、現ウクライナ領ピクフでポーランドの大貴族の家に生まれる。作家、旅行家、歴史家、考古学者、民族学者。家庭ではフランス語で育てられ、生活語としてポーランド語、ウクライナ語、ドイツ語の他に、弟とともに送られたスイスの塾で、英語も身につけ、さらに成年までにロシア語、スペイン語、イタリア語も習得、八か国語に通じていた。『サラゴサ手稿』はポーランド語より通じていたフランス語で書かれたものである。1815年、自宅でピストル自殺を遂げた。