『灰と家』 鈴木一平
『灰と家』
鈴木一平 / いぬのせなか座 / B5変形判並製 / 124P
ねむる鹿を着て
欠けた蹄のうっすら白いところをなぞり
よく聞こえていく足音で
仰向けの鮒に耳打ちをする、おまえの体を渡って
向こう岸にいく
*
散文と韻文、日記と俳句、音と語――互いがまったくの異種でありながら、自らに残されていなかったはずのポテンシャルを形成しあう、環境=レイアウトの制作。
繰り返される試行錯誤の見開きが、事物や生物、死後の私による制作の持続を担う、新たな言語を探索する。
いぬのせなか座のメンバーとして活動し、『ユリイカ』『花椿』『HAPAX』『現代詩手帖』『三田文学』『現代思想』など各誌に作品・論考を寄稿する詩人・鈴木一平の、記念すべき第一詩集。
あるいは出版版元「いぬのせなか座」としての、はじまりの一冊。
★第6回エルスール財団新人賞<現代詩部門>受賞
★第35回現代詩花椿賞最終候補
☆『現代詩手帖』『東京新聞』『BRUTUS』『美術手帖』など各誌にて紹介
[栞文(付録小冊子)]
金子鉄夫/World’s Forgotten Boy/なまけ/山本浩貴+h
目次
Ⅰ
あじさいの花を着る鹿は
道をふさぐ石
山の背に夜が注ぎ込まれて
岸辺の木
土がおぼえた
日差しの絵
水たまりに戻る道
金具に映る月
移り住む町
神さまの誕生日
次に住む人
すべての屋根が
かげのえ
夜道のそとで
Ⅱ
日記
Ⅲ
日記
空の建物
足あとに
私を繁栄させるには
夜になるまえに
木陰の跡で
水路
灰と家
名札がひとつ
雨の、雨のふる日にそなえて
西日の広場