『悪いことはなぜ楽しいのか』 戸谷洋志
『悪いことはなぜ楽しいのか』
戸谷洋志 / 筑摩書房 / 新書判並製 / 160P
意地悪、ルールを破るなど、いけないことには絶妙に心躍る瞬間がある。なぜそういった気持ちになってしまうのか。私たちのダメな部分から「悪と善」を考える。
「やられたらやりかえす」「ルールは破るためにある」
「空気なんて知らない」「意地悪したい」
「自分が楽しければいい」
これに共感する私って「ふつう」ですよね?
ちょっといけないことをしたとき、ドキドキして心が躍る。
意地悪、自己中、復讐にも絶妙な快楽がつきまとう。
なぜ、私たちはそんな気持ちになってしまうのか?
私たちのよくない部分から、悪と善を考える。
この本は決して、みなさんを悪の道に進ませようとしているわけではありません。あるいは反対に、「こういう風に行為することは悪いことだからやめよう」といった、お説教をしたいわけでもありません。そうではなく、私たちにとって本当に「悪い」ことを見定め、そして「悪い」ことに誘惑されてしまう人間の弱さを受け入れながら、よりベターな生き方がどのようなものかを考える手がかりを提供すること、それがこの本が目指していることです。
(「はじめに」より)
目次
第一章 自己チューなのはなぜ楽しいのか
勝手にハモらないでくれ!
平等の弊害
万人の万人に対する闘争
リヴァイアサンとしての権力
自己中がそれ自体で悪ではない
カラオケにおけるエゴイズム
第二章 意地悪はなぜ楽しいのか
魔王には「ぐおおおおおおお」と言ってほしい
なぜ人は悪意を抱くのか
さまざまな悪意
『こころ』における嫉妬
意地悪と同情
性格は変えられる?
第三章 復讐することはなぜ楽しいのか
「ぐぬぬ」顔を見せてみろ
復讐は悪いことか?
神なき世界の倫理
苦痛と快楽の両立
正義にかなった復讐
お金の有効性と限界
第四章 自傷行為はなぜ楽しいのか
筋トレは自傷行為か?
リストカットはいけなそう?
断食に誇りを感じられるか
誰もが納得できる行為とは?
人間の尊厳
自傷行為をしてはいけない理由
第五章 空気を読まないのはなぜ楽しいのか
制服を着崩す権利
「空気」の同調圧力
時代を支配する空気
なぜ人は空気を読むのか
本来性を取り戻す
空気を読まないで生きていこう
第六章 反逆するのはなぜ楽しいのか
空手とブレイクダンス
ルールを変えることの難しさ
「正しい生き方」とは何か
反逆の暴力性
複数性と全体主義
正しく反逆するために
「悲惨な人々」を生まないために