『29歳、今日から私が家長です。』 イ・スラ
『29歳、今日から私が家長です。』
イ・スラ 著 / 清水知佐子 訳
CCCメディアハウス / 四六判並製 / 312P
凛々しい娘、美しいおじさん、珍妙なおばさん。
軽快な3人が送る、最高にイケてて、時々泣ける
”これから”のホームコメディ!
この小説は家父長でも家母長でもない娘が家長(家女長)で主人公。
厳しい祖父が統治する家で生まれた女の子・スラがすくすく育って家庭を統治する。
作文を家業に家を興した娘が、一家の経済権と主権を握る。
家父長の家では決してありえないような美しくて痛快な革命が続くかと思ったら、家父長が犯したミスを家女長も踏襲したりする。家女長が家の勢力を握ってから、家族メンバー1に転落した元家父長は、自ら権威を手放すことで可愛くて面白い中年男性として存在感を表す。この父は片腕にはモップを、もう片腕には掃除機を入れ墨にして、家のあちこちを熱心に掃除しながら家女長と妻を補佐する。だが、この小説は家父長制を廃止しようという扇動や家父長制への批判に満ちた話ではない。スラはどの家父長よりも合理的で立派な家長になりたいと思っているが、スラの母にも家女長の時代が家父長の時代より良いのだろうか。スラの家女長革命は果たして皆を幸せにすることができるだろうか。