『〈ツイッター〉にとって美とはなにか SNS以後に「書く」ということ』 大谷能生

『〈ツイッター〉にとって美とはなにか SNS以後に「書く」ということ』
大谷能生 / フィルムアート社 / 四六判並製 / 344P


なぜ「書くこと」が〈わたしたち〉を隔て〈わたし〉を引き裂くのか?

インターネット環境とデジタル・デバイスの発達によって「書くこと」と「話すこと」が限りなく近接する現代の状況を哲学・日本語学・批評・文学・美学の知見から縦横無尽に論じる「Twitter」時代の終焉に捧ぐ、大スケール言語文化論!

なぜ声をそのまま文字にできないのか?
なぜ炎上は起きてしまうのか?
なぜSNSで熟議は生まれないのか?

その答えを探るために、本書が議論の礎とするのが、「書くこと」と「話すこと」とのあいだに鋭い対立を見出した吉本隆明の『言語にとって美とはなにか』である。

第一部では、吉本の主張に沿って、書くことは言葉の〈自己表出〉性と〈指示表出〉性とのあいだで自身を引き裂かれる「疎外された労働(カール・マルクス)」であることが確認される。ほかにも、日本語詩のリズムについて論じた菅谷規矩雄、言語活動の成立条件として〈主体〉〈場面〉〈素材〉を挙げた時枝誠記、「書くこと」による精神の発展史を記述したG・W・F・ヘーゲル、〈かつてあった〉ものとして写真を論じたロラン・バルトらが言及され、本書における重要な論点が提示される。

第二部では、写真・映像文化の黎明期における西洋の言語活動を、様々な「指示表出」と「自己表出」のアレンジメントの表れとして分析する。「指示表出」の体系を転倒させる遊戯を試みたルイス・キャロルに対して、「自己表出」の無軌道な噴出としての「犯罪」を描いたコナン・ドイル。シャルル・ボードレールが称揚した「現代性」を体現するかのようなギュスターヴ・クールベやエドワール・マネの絵画。ジャン゠リュック・ゴダールが主張したように、「イメージ」と「言葉」を巡る権力配置の問い直しの可能性を秘めたサイレント映画。映画的視覚による「観察」を小説に書き留めたフランツ・カフカ、「サイレントからトーキーへの移行」を自身の思想に反映させたルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン……それら西洋の文化圏を根底で規定する「音声中心主義」について、ジャック・デリダ、J・L・オースティンを参照しつつ論じる。

第三部では、現代的な日本語が定礎された時代の日本の作家たちについて考察する。『文学論』で普遍的な「言語活動」の枠組みを提示しようとした夏目漱石、それに対をなすかのように「口誦文学」の伝統を更新しようとした正岡子規、「ローマ字日記」によって都市を描写しようとした石川啄木、そして『古事記』を「天皇の声」を記録したものとして捉えた本居宣長にまで遡り、その『古事記伝』について論じた小林秀雄の「近代性」について、橋本治を参照しつつ考察する。

第四部では、前述された論点から、「『書く』ことと『話す』ことが軋みの音をあげながら交錯する」場としてのツイッターを分析する。SNSと「熟議」の関係について論じるキャス・サンスティーンの議論や、トランプ現象、米議事堂襲撃事件などが言及される。そして、吉本の述べる〈大衆〉を「「書く」ということに携わらない人々」として捉え、「SNSで投稿する人々」に適用することによって、その概念の現在性を明らかにする。



ひたすら機能性へと傾けられた「広告」的言葉たちの繁茂は、「ツイッター」から「X」へと名称が変わった一企業のサービスにおいて、現在、空き地を買い占めてビルを建て「ジェントリフィケーション」を推し進めるようなやり方でもって、「疎外」とはまた別の経験をぼくたちの思考に与えているのである。
もはや過去の話になってしまったようにも思うのだが、もしツイッターにおいて「美」というものがあったとするのなら、それは、書くことと話すことのあわいに生まれる、まだ何処へ向かうのか理解不能な極小の表出を、決して単純にこれまでの「指示表出」性の体系には従わせないぞ、という意志に宿るものであっただろう。(本文より)

¥2,420

※こちらの価格には消費税が含まれています。

※別途送料がかかります。送料を確認する

送料・配送方法について

この商品の送料は、配送方法によって異なります。 配送方法は、ご購入時に選択することができます。
¥15,000以上のご注文で国内送料が無料になります。

  • 佐川急便

    送料は地域により異なります

    • 北海道

      ¥950

    • 東北
      青森県, 岩手県, 宮城県, 秋田県,
      山形県, 福島県

      ¥800

    • 関東
      茨城県, 栃木県, 群馬県, 埼玉県,
      千葉県, 東京都, 神奈川県, 山梨県

      ¥700

    • 信越
      新潟県, 長野県

      ¥700

    • 北陸
      富山県, 石川県, 福井県

      ¥700

    • 東海
      岐阜県, 静岡県, 愛知県, 三重県

      ¥700

    • 近畿
      滋賀県, 京都府, 大阪府, 兵庫県,
      奈良県, 和歌山県

      ¥680

    • 中国
      鳥取県, 島根県, 岡山県, 広島県, 山口県

      ¥700

    • 四国
      徳島県, 香川県, 愛媛県, 高知県

      ¥700

    • 九州
      福岡県, 佐賀県, 長崎県, 熊本県,
      大分県, 宮崎県, 鹿児島県

      ¥700

    • 沖縄

      ¥2,250

  • クリックポスト

    全国一律 ¥270

※¥15,000以上のご注文で国内送料が無料になります。

再入荷のお知らせを希望する

年齢確認

再入荷されましたら、登録したメールアドレス宛にお知らせします。

メールアドレス

折返しのメールが受信できるように、ドメイン指定受信で「thebase.in」と「gmail.com」を許可するように設定してください。

再入荷のお知らせを希望する

再入荷のお知らせを受け付けました。

ご記入いただいたメールアドレス宛に確認メールをお送りしておりますので、ご確認ください。
メールが届いていない場合は、迷惑メールフォルダをご確認ください。
通知受信時に、メールサーバー容量がオーバーしているなどの理由で受信できない場合がございます。ご確認ください。

折返しのメールが受信できるように、ドメイン指定受信で「thebase.in」と「gmail.com」を許可するように設定してください。

通報する

ショップの評価