『先人は遅れてくる パリのガイドブックで東京の町を闊歩する3』 友田とん
『先人は遅れてくる パリのガイドブックで東京の町を闊歩する3』
友田とん / 代わりに読む人 / 新書判並製 / 144P
啓示を受けたように思いついた「パリのガイドブックで東京の町を闊歩する」という言葉を、意味もわからぬままに実践しようと試みる連作エッセイシリーズ最新作。
コロナ渦中の町を歩き、近所で見かけた看板の言葉をきっかけに本当の言葉探しをはじめた「私」は、弘法大師と高野山から、『オズの魔法使い』、松任谷由実のドキュメンタリー番組、『西遊記』など、何かを求める旅の物語に思いを馳せるうちに、半導体エンジニアの職へと導かれた出会いの記憶へと至って……。訪ねた土地で過去の出来事や読んだ小説の断片の記憶を芋づる式に蘇らせていく至福。
全4章、約5万字の文章と18枚のカラー写真、画家・いちろうの挿画で構成。
◉目次
第1章 半径1km圏内の言葉
第2章 弘法大師のご利益か
第3章 繰り返しの効能
第4章 先人は遅れてくる
前書きなど
本書はある日、啓示を受けたように思いついた「パリのガイドブックで東京の町を闊歩する」というナンセンスな言葉を、実践しようと試みる連作エッセイシリーズです。第一号「まだ歩きださない」では、その言葉の意味や、どうすればそれを実践したことになるのか著者自身もわからないまま歩くうちに、なかなかありつけないフレンチトーストが、カフカの『城』などに喩えながら綴られます。その後、パリのガイドブックで東京の町を闊歩するには、まずはパリのガイドブックを読まなければならないと覚悟を決めた著者は第二号「読めないガイドブック」で、全国各地を訪ねては、見つけたパリのガイドブックを買い集めますが、ガイドブックを通読するというのはなかなかの苦行で、一向に読み進められません。とはいえ、迷いながらも東京の町を歩き、パリのガイドブックに意識を向けていなければ気付かなかった物事を発見するうちに、日常の町歩きは冒険の様相を呈していきます。第三号となる本書ではいったい何が起こるのか。気になった号から単独でも、また1号から順でも、どちらでもお楽しみいただけます。
版元から一言
読売新聞(評者・岸本佐知子)で「豊かな脱線の中から見えてくるものを追究する作者の旅」と評されたシリーズ三年ぶりの続刊。なんでもない日常ではなく、日常のなかに劇的なものを見つけようとしてきた著者が、持ち前のユーモアをお守りに、次々と連想しながら、市井の人と歴史の深くまで潜っていく連作エッセイ集です。