『衣巻省三作品集 街のスタイル』山本善行 編
『衣巻省三作品集 街のスタイル』
衣巻省三 著 / 山本善行 編集
国書刊行会 / 四六変型判函入 / 432P
衣巻省三は馬込村文士の一員として、盟友・稲垣足穂とともに幻想味のある作風が高く評価されたモダニズム作家・詩人。モダニズムの華やかなりし昭和初期にボン書店などから刊行された著書はいずれも稀覯本。戦後は容易に読むことができない状態が続き、これまで幻の作家とされてきた。
左川ちかや北園克衛などのモダニズム文学が読み継がれるなか、マイナーポエットの雄として古本通から注目が集まる。モダンで清冽な叙情とある種の悪戯心に溢れた詩作品、幻想味からメタフィクションまで作風の広い中短篇など、現代の読者が読んでも不思議な輝きを感じさせる。
長篇小説「けしかけられた男」は第一回芥川賞の有力候補になり、足穂や左川のほかにも、これまで萩原朔太郎、伊藤整、川端康成などが高く評価してきた。意外なところでは名フォーク歌手の高田渡が詩「アイスクリーム」を取り上げている。
本書は古本ソムリエ・山本善行氏の撰による、令和の世に贈る90年ぶりのオリジナル作品集である。
【目次】
詩
「こわれた街」
「足風琴」
小説
「プリマドンナ」
「ポオの館」
「雨の街」
「落ちたスプウン」
「どこの町」
「キッドの靴」
「陋巷」
「街のスタイル」
「歪められた景色」
撰者あとがき