『ゴスペルシンガー』 ハリー・クルーズ
『ゴスペルシンガー』
ハリー・クルーズ 著 / 齋藤浩太 訳
扶桑社 / 文庫判並製 / 376P
暴力とグロテスクと哄笑に彩られた南部犯罪小説の伝説的傑作、登場。フラナリー・オコナーの異形の後継者にして、コーマック・マッカーシーの先駆的存在、そしてマイクル・コナリーの創作の師、ハリー。クルーズ。エルヴィス・プレスリーが自らの主演で映画化を熱望した衝撃の一書が、遂にそのヴェールを脱ぐ。ディープ・サウスの「地獄」にようこそ。ジョージア州エニグマは、行き止まりの町だ。牢には黒人の大男ウィラリーが囚われ、葬儀屋には彼が惨殺したメリーベルの遺体が安置されている。そんな町の誰もが、ゴスペルシンガーの帰還を待ち望んでいた。町出身の輝ける成功者。美しい容姿と天使の歌声を持つカリスマ。メリーベルの恋人。奇跡を行う者……。その彼が町に帰って来る。黒いキャデラックに乗って。アメリカ南部を舞台に、人の愚かしさと世界の混沌を、魂と臓腑をえぐる危険な筆致で描き出す衝撃の一書、邦訳なる。(解説・吉野仁)