『塵に訊け』 ジョン・ファンテ
『塵に訊け』
ジョン・ファンテ 著 / 栗原俊秀 訳
未知谷 / 四六判上製 / 284P
30年代の頽廃、ビートニクの先駆
所は照りつける太陽と視界を奪う砂漠の塵が舞うロサンゼルス――
ワラチを履いたメキシコ娘カミラ
作家志望のイタリア系アルトゥーロ
差別される者どうしの共感が恋に 震え、疾駆し、うなり、転げる生
80年の再刊で沸騰した名著の新訳
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ブラック・スパロウ版には、チャールズ・ブコウスキーが序文を寄せている。……このたびの新訳では、訳者の判断により「附録」として作品の末尾に置くこととした。ブコウスキーの言葉を介さずに、まずファンテ自身の作品に触れてほしいという願いがあるからである。……本書を含め六冊の日本語訳がそろったいま、そろそろ、「ブコウスキーによって再発見された」という枕詞から、ファンテを解放してもいいのではないかと訳者は感じている。
(「訳者あとがき」より)
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一行一行が軽やかにページを転がっていく、言葉がほとばしっている。すべての行にエネルギーが宿っていて、同じように力強い行がそれに続く。各行の核となる部分がページに形を与え、そのなかに刻まれたなにかの感覚を伝えている。しかも、この男は感情を恐れていない。ユーモアと痛みが、どこまでも飾り気なく混ぜ合わされている。あの本の冒頭は私にとって、けたはずれの荒ぶる奇跡だった。……本のタイトルは『塵に訊け』、著者の名前はジョン・ファンテだった。
(「チャールズ・ブコウスキーによる序文」より)