『いなくなっていない父』 金川晋吾
『いなくなっていない父』
金川晋吾 / 晶文社 / 四六判上製 / 266P
その後のことを知っている私には、父のことを「失踪を繰り返す父」と呼ぶのはどうしても過剰なことに思える。私がそう思うのは、「父がやっていることなんてそんなにたいしたことではないんです」と謙遜するような気持ちもあるが、本当のところは、「父という人は、『失踪を繰り返す』という言葉で片づけてしまえるような人ではないのだ」と自慢げに言いたい気持ちのほうが強くある。――(本文より)
『father』にて「失踪する父」とされた男は、その後は失踪を止めた。
不在の父を撮影する写真家として知られるようになった著者に、「いる父」と向き合うことで何が浮かび上がってくるのか。
時に不気味に、時に息苦しく、時にユーモラスに目の前に現れる親子の姿をファインダーとテキストを通して描く、ドキュメンタリーノベル。