『バンディーニ家よ、春を待て』 ジョン・ファンテ
『バンディーニ家よ、春を待て』
ジョン・ファンテ 著 / 栗原俊秀 訳
未知谷 / 四六判上製 / 320P
「彼は家に帰る途中だった。けれど家に帰ることに、いったいなんの意味がある?」
1930年代、アメリカ西海岸。貧困と信仰と悪罵が交錯するイタリア系移民の家庭で育った著者の自伝的連作バンディーニもの、第一作長篇。
「家族」とは何か、帰るべき「家」とは何か、わたしたちはなぜ「家」に帰るのか。これこそが『バンディーニ』の叙述を駆りたてる問いかけであり、小説はこの問いへの答えそのものとして読むことができる。……ファンテの作品では「父―息子」の関係に焦点の当てられるケースが多いが、『バンディーニ』ではそこに母の存在が介入してくる。『バンディーニ』という小説を読んでいると、アルトゥーロの大好きな「父のハンカチ」に触れたときのように、「父と母の手触りがいちどきに」流れこんでくる。ファンテの作品のなかで、母にかんする叙述がこれほどまでの精彩を放っているのは、ほかに『デイゴ・レッド』だけだろう。
(「訳者あとがき」より)