『ゾンビの小哲学 ホラーを通していかに思考するか』 マキシム・クロンブ
『ゾンビの小哲学 ホラーを通していかに思考するか』
マキシム・クロンブ 著 / 武田宙也,福田安佐子 訳
人文書院 / 四六判上製 / 200P
恐怖の哲学
われわれはなぜゾンビに魅了されるのか。なぜ彼らに襲われ、世界が崩壊するさまを何度も描き出してしまうのか。本書では、映画をはじめ多様なコンテンツに溢れるゾンビを、現代社会を生きる人々の欲望の徴候と捉え、カント、フロイトなど大文字の理論から、アガンベン、ディディ=ユベルマン、クリステヴァなど現代思想まで豊富なツールを動員し、様々な切り口と角度から論じる。ゾンビの眼に映る人類の未来とは何か。カナダ気鋭の研究者が放つ、ゾンビを通した現代社会論の白眉。
「ゾンビは、風変わりなガイドであった。そのゆっくりとした、引きずるような足取りや、徘徊やためらいについてゆくことからわれわれは、現代をめぐる複雑で多義的なイメージを受け取ってきた。その眼に映し出すことによって、また、そのメタファーを書き換えなおすことによってさえ、ゾンビはわれわれに、とりわけ陰鬱な、ほとんどたがのはずれた世界を提示するのである。ここから、ゾンビとは流行の影響を受けたものというよりも、時代の、その問いや疑いの影響を受けたものであることがわかる。そのとき、われわれにとって身近な映画におけるゾンビの存在は、別の意味を帯びるようになる。それはいまや、気晴らしから徴候になりうるのである。」(本書より)
○目次
試みとしてのゾンビ
モチーフ
ハイチのゾンビ
一九六〇年代のゾンビ
伝染病としてのゾンビ
進化と変化
分身
現実が横滑りするとき
類似
ゾンビの内的世界
近代性の心的外傷
ワニスの下には怪物が
聖なる人間(ホモ・サケル)
懐疑と反人間主義
怪物
「死、いたるところに死が」
アブジェクト
死の否認
亡霊からゾンビへ
肉の否認
グロテスクな形象としてのゾンビ
夢見る代わりにストレスを解消すること
アポカリプス
崇高と廃墟
矛盾と理念
崇高の意味――世界の終末の反芻
好奇心とストレス解消
死の欲動とストレス解消
フィクションを通じてストレスを解消すること