『本屋で待つ』 佐藤友則、島田潤一郎
『本屋で待つ』
佐藤友則、島田潤一郎 / 夏葉社 / 四六判変形上製 / 298P
広島県庄原市の書店「ウィー東城店」の佐藤友則の話を2年にわたって聞いたものを、島田潤一郎がまとめた一冊。
人口約7000人の町にある「ウィー東城店」。
老舗書店の長男だった著者は、町民の相談ごとに耳を傾け続けることで、赤字続きだった店を立て直します。
「電化製品がこわれた」
「年賀状の字がもう書けない」
「普通免許をとりたいけど、母国語のポルトガル語しか読めない」
町の人びとは、本屋へ行けばなにかヒントがある、と考えて、本屋にやってきます。
その本にたいする信頼、そして本を売る人への信頼が、ウィー東城店を特別な店に変えていきます。
本書が感動的なのは、ウィー東城店が町の人びとの相談ごとのひとつとして、次々に学校へ行けなかった若者たちを雇用し、彼らが社会へ出るための後押しをしていることです。
本のある場所で、本を求める人と会話することが、若者たちの心を少しずつ癒やしていきます。
本書はその貴重な記録でもあります。