『私の文学渉猟』 曾根博義
『私の文学渉猟』
曾根博義 / 夏葉社 / 四六判上製 / 400P
日本近代文学研究者である著者が、さまざまな媒体に執筆した、文学と古本にまつわるエッセイ集。
扱われる作家、本は昭和が中心で、かなりの古書マニアでないと知らないような作家、本、雑誌がいくつも出てきます。
けれど、この本はそうした稀覯書を紹介する本ではなく、古本のを買うという行為に焦点をあてた本でもありません。
本書が正面から描くのは、文学、書物の世界の奥深さ。
戦時下の文学全集の行方を追う「『新日本文学全集』と戦争下の出版状況」、文学が広く一般読者に読まれる過程をひもとく、「文芸評論と大衆」、開戦の日の小林秀雄の文章を考える「十二月八日――真珠湾――知識人と戦争」等々、文学好きの読者に読んでほしいエッセイがいくつも収録された一冊。