『ゼペット』 レベッカ・ブラウン 著 / 柴田元幸 訳 / カナイフユキ 絵
『ゼペット』
レベッカ・ブラウン 著 / 柴田元幸 訳 / カナイフユキ 絵
ignition gallery / w148×h196mm並製本+両雁だれ / 28P カラー
『体の贈り物』『若かった日々』『家庭の医学』などで知られるアメリカの作家、レベッカ・ブラウンの小品「ゼペット」を、柴田元幸の翻訳、カナイフユキの絵によって、絵本にしました。
レベッカ・ブラウンが夢見なおした『ピノキオ』です。
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人間になんかなりたくない、命なんかほしくないと言い続けるピノキオを抱えた老人のお話。
その悲しみと優しさに、カナイフユキの色彩が寄り添います。
不器用で、弱く、失敗して負けていく人、周縁化されていく人のために、そういう人たちが孤独ではないんだと思えるように描いているカナイフユキと、レベッカ・ブラウンによる、「祈り」にも似た絵本が誕生しました。
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レベッカ・ブラウンの「ゼペット」(“Geppetto”)は、2018年に刊行されたNot Heaven, Somewhere Else: A Cycle of Stories(『天国ではなく、どこか別の場所 物語集』、Tarpaulin Sky Press刊、邦訳なし)に収められている。この物語集には、「三匹の子ぶた」を踏まえた“Pigs”、「赤ずきんちゃん」を踏まえた“To Grandmother’s House”をはじめ、ヘンゼルとグレーテル、ハンプティ・ダンプティなど、さまざまな伝統的物語やキャラクターがレベッカ流に語りなおされた物語が並んでいる。語り直しの切り口は作品によってさまざまで、単一のメッセージに還元できない、豊かな「サイクル」が出来上がっている。100ページに満たない小著だが、怒りと希望をシンプルな文章で発信しつづけるレズビアン作家レベッカ・ブラウンの神髄が伝わってくる。
「ゼペット」は厳しさと優しさが並存していて、中でもとりわけ味わい深い。
柴田元幸