『くやしさをバネに チョン・ファシンのめくるめく人生』 チョン・ファシン
『くやしさをバネに チョン・ファシンのめくるめく人生』
チョン・ファシン / 書肆侃侃房 / 四六判並製 / 224P
目と口と耳があれば生きてゆける。
日本語は一言もしゃべれず、書くこともままならなかった娘チョン・ファシンは日本で働く朝鮮の青年と結婚し、15歳で日本に渡る。80年に及ぶ日本での過酷な日々を、いつも明るく逞しく不撓不屈の精神で生き抜いた1人の朝鮮人女性の生涯を描いた感動の物語。
長い髪をきりりと結んだ利発そうな若い女性が深々と頭を下げた。
母は若い教師の手を握りながら、嬉し涙をあふれさせる。目の前にいる女性こそ、自分の夢、
教育を受け教師になりたかった自分の姿だと。
母の涙を眺めながら、母が今の時代に生まれていたら、と夢想した。両親や夫への反骨心だけが日本に渡った母を支え、ここまでやってこられたことを思うと、人生にとって何が大事なのかは、人それぞれの気がした。