『黒い雲と白い雲との境目にグレーではない光が見える』 26人のがんサバイバー あの風プロジェクト
『黒い雲と白い雲との境目にグレーではない光が見える』
26人のがんサバイバー あの風プロジェクト 著 / 岡野大嗣 監修 / 西淑 イラスト
左右社 / 四六版変形コデックス装 / 108P
がんサバイバー当事者による、闘病の不安に寄り添う短歌集
闘病の不安のなか、専門書や生々しい体験記を読むのが辛いとき、短歌は「31字のお守り」としてそっと心に寄り添ってくれる。
がん当事者の「闘病の不安に寄り添う、女性がんサバイバーによる短歌集を出版したい」という思いから生まれた「あの風プロジェクト」。
短歌集を出版し、完成した本をサバイバーや団体、病院へ無料で届けるためのクラウドファンディングはたちまち話題となり、開始から12時間で100%達成、その3日後にネクストゴールも達成した。
本書では、26人の女性サバイバーが歌人・岡野大嗣の特別レッスンを経てつくった300首から厳選された26の短歌に、人気イラストレーター・西淑による描き下ろしカラーイラスト、4つの連作、15人の体験談「サバイバーストーリー」を収録。
サバイバーにはそれぞれ、辛い思いだけでなく、「サバイバーだからこそ感じられたいつまでも忘れたくない想いや情景」がある。
ふたりにひとりはがんになる時代、当事者はもちろん、「第二の患者」と言われる家族や友人、がん以外で闘病中の方や不安を抱えている方すべてに「ひとりじゃないよ」と伝える一冊。
いま、同じ時代を生きている、
女性がんサバイバーたちがつくった「口ずさめるお守り」。
一つひとつに異なる祈りが込められて、
そのまなざしはそれぞれに美しい。
――岡野大嗣
【収録歌より】
またがんと生きる私に十字架を差し込むごとく天窓の陽は
蝉の声まぶしく耳をつんざいて歪んだ脳に「生きろ」と響く
髪の毛と眉毛と睫毛それとそれと目には見えない鼻毛ください
鍵もたず朝の玄関でるように母と別れた手術室前
生まれたての傷をいたわる初めての沐浴に似た戸惑いの手で
学生のはしゃいで歩く群れにまだ病気知らずのわたしが見える
風が吹くにおいがちょっとつめたくて秋の帽子を買いに行かなきゃ