『絵画の前で ー物語と詩ー』 ローベルト・ヴァルザー
『絵画の前で ー物語と詩ー』
ローベルト・ヴァルザー 著 / 若林恵 訳
鳥影社 / 四六判上製 / 172P
滑脱な精神の印
一枚の絵を前にしてヴァルザーは自由だ。時には簡潔に、時には冗長なまでに語る。またドラクロワやルノワールの絵に触発されて、詩を生み出す。散文にしろ詩にしろ、小さなものに焦点を合わせてヴァルザーの世界そのものを創り上げる。
ヴァルザーにとって重要なのはオリジナルの真正さや神聖さではなく、記憶の確かさや描写の正確さでもなく、自らが物語を紡ぎ出すことができる着想やインスピレーションがあるかどうかなのだ。