『岩とからあげをまちがえる』大前粟生※特典掌篇付
『岩とからあげをまちがえる』
大前粟生 / ミシマ社 / 四六判変型 / 216P
※特典掌篇「みちこちゃんとしろくまちゃんのほっとけーき夢のふくふくセット」付
歩いていたら、何かを見まちがえた。
すると、全然知らない世界がのぞきこんできた。
ちょっと奇妙でにぎやかなみんなの暮らしがここに。
『ぬいぐるみとしゃべるひとはやさしい』『私と鰐と妹の部屋』の大前粟生による、最新書き下ろし短編集。100の小説と、100の絵を収録。
◎本文の内容を一部先行公開!
1
岩とからあげをまちがえる。岩とからあげをまちがえたから、歯がかけちゃった。みちこちゃん、落ちてるものをたべないでね。歯医者さんはやさしくいう。みちこちゃんは歯医者さんがすきだから、それからときどき、岩とからあげをまちがえる。
4
走ろうと思った。夏が追いかけてくるから。ブイブイブイブイ。みちこちゃんは夏より早く秋になって、秋より早く冬になった。冬を追い越して春になり、まちがえて春のことも追い越した。うわ〜〜〜と叫びながらみちこちゃんはアイスをたべて、いくらうしろに歩いてもうしろにはもどれなかった。
41
「犬」と書いたシールがある。これを貼っているあいだ、ぜんぶが犬になる。つくえ犬。イス犬。パソコン犬。本犬。はさみ犬。階段犬。冷蔵庫犬。家犬。ギター犬。町犬。春犬。夜犬。海犬。地球犬。今日、みちこちゃん犬は新幹線犬に乗っておばあちゃん犬のお見舞いにいった。犬だから、こわかった病院犬にも入れた。