『来世の記憶』藤野可織
『来世の記憶』
藤野可織 / KADOKAWA / 四六判上製 / 280P
途方もない悲しみと誇らしさ。そんなの、女の子なら誰だって経験してる。
「あたしの前世は、はっきり言って最悪だった。あたしは、おっさんだった」
地球爆発後の近未来。おっさんだったという記憶を持つ「あたし」の親友は、私が前世で殴り殺した妻だった。前世の記憶があるのは私だけ。自分の容姿も、自分が生きてきて得たものすべてが気に入らなかった私は、親友が前世の記憶を思い出すことを恐れている。(「前世の記憶」)
「ああもうだめ」私は笑って首を振っている。「うそ、もっとがんばれるでしょ?」「だめ、限界、眠くて」寝ている間に終わった戦争。愛も命も希望も努力も、眠っている間に何もかもが終わっていた。(「眠りの館」)
ほか、本書のための書き下ろしを加えた全20篇。
その只事でない世界観、圧倒的な美しい文章と表現力により読者を異界へいざない、現実の恐怖へ突き落とす。藤野可織の最新作品集。