『『ボヴァリー夫人』論〔増補決定版〕』上下巻セット 蓮實重彦

『『ボヴァリー夫人』論〔増補決定版〕』上下巻セット
蓮實重彦 / 筑摩書房 / 文庫判並製 / 624P,624P

「何も書かれていない書物」たることを夢見て生み出された『ボヴァリー夫人』。
この作品をどこまでもその「テクスト的な現実」に即して分析したものが本書である。
「エンマ・ボヴァリー」という固有名詞の不在の指摘を嚆矢として、手や足、数字といった細部の考察、さまざまなフィクション論などをめぐる批判的検討がなされる。
周到かつ繊細な読解によって明らかとなる細部相互の齟齬と照応、差異と類似の共鳴。
それらを通じ、テクストがまぎれもなく運動の惹起やみずからの変容、つまりは生成の流動とともにあることを読者はつぶさに知らされるだろう。
蓮實批評の方法を大規模に示した代表作。

『ボヴァリー夫人』についてわれわれは何を知っているだろうか。散文形式のフィクションを読むにはどのような態度が必要なのか。「散文は生まれたばかりのもの」という歴史認識とともに書かれたフローベール最初の長編小説には、とらえがたい「不確かさ」と「曖昧さ」がある──。細部の意義深い配置である「主題論」的体系と語りの形式を含めた物語を意味する「説話論」的構造。テクストを組織する両者の絡み合いや発生する意味作用の精細な分析は、作品の思いもよらない側面を浮かびあがらせる。一個の作品に対し、かつてこれほどまで肉薄した試みはあっただろうか。関連論考を付した決定版。

上巻目次
凡例
序章 読むことの始まりにむけて
Ⅰ 散文と歴史
Ⅱ 懇願と報酬
Ⅲ 署名と交通
Ⅳ 小説と物語
Ⅴ 華奢と頑丈
Ⅵ 塵埃と頭髪




下巻目次
Ⅶ 類似と齟齬
Ⅷ 虚構と表象
Ⅸ 言葉と数字
Ⅹ 運動と物質
終章 読むことを終えるにあたって


補考  散文は生まれたばかりのものである――『ボヴァリー夫人』のテクストに挿入された「余白」についての考察

もろもろの謝辞――あとがきにかえて――
文庫版あとがき
書誌
人名索引

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