『ロラン・バルト 喪の日記 新装版』石川美子 訳

『ロラン・バルト 喪の日記 新装版』
ロラン・バルト 著 / 石川美子 訳
みすず書房 / 四六判上製 / 304P

「1978年8月18日
彼女が臥せっていて、そこで亡くなり、いまはわたしが寝起きをしている部屋のその場所。彼女のベッドの頭部をくっつけてあった壁に、イコンを置いた――信仰からではない――。そこのテーブルの上には、いつも花をかざってある。それゆえに、もう旅をしたくなくなっている。そこにいられるように、けっして花をしおれさせたりしないように、と。」

最愛の母アンリエットは1977年10月25日に亡くなる。その死は、たんなる悲しみをこえた絶望的な思いをもたらし、残酷な喪のなかで、バルトはカードに日記を書きはじめた。二年近くのあいだに書かれたカードは320枚、バルト自身によって五つに分けられ『喪の日記』と名づけられた。
とぎれとぎれの言葉が、すこしずつかたちをなして、ひとつの作品の輪郭をえがきはじめるのが日記からかいまみられる。そうして、母の写真をめぐる作品『明るい部屋』が生まれたのだった。
『喪の日記』は、最晩年のバルトがのこした苦悩の刻跡であり、愛するひとを失った者が「新たな生」をはじめようとする懸命の物語である。そこから浮かびあがってくるのは、言葉で生かされている者が言葉にすがって立ち上がろうとする静やかなすがたなのである。

目次
喪の日記 1977年10月26日-1978年6月21日
日記のつづき 1978年6月24日-1978年10月25日
(新たなつづき) 1978年10月26日-1979年9月15日
日付のない断章
マムについてのメモ

訳註・解説

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