『人魚と林檎』 眞鍋せいら

『人魚と林檎』
眞鍋せいら / 港の人 / 四六判並製 / 181P

新鋭歌人・眞鍋せいらの第1歌集。心の病からの恢復の道のり、クワロマンティック的な感情、遠くパレスチナの人びとや能登地震の被災者に心寄せるなど〈魂のいたみ〉に深く根差した、多様なテーマを詠む。



すでにもう人魚のいない海に来て人魚のための林檎を放る
習わねば泳げもしない生き物に成り果ててからの何億の夜
灯台へ 灯台へゆく 着いたなら悲しみも迫ってくると知りつつ
海ならば韻文月の満ち欠けと一緒にずっと満ちては引いて



装丁 飯塚文子



■著者

眞鍋せいら(まなべ・せいら)
1996年4月、東京生まれ。2019年より作歌を始める。連作「陸の潮騒」で第66回短歌研究新人賞佳作。所属結社なし。



■栞より

『人魚と林檎』を一読して感じたのは、死が隣にある/あったひとの歌だろうな、ということだ。思いを飛ばそうとするのだけれど、その声は鎮魂のように静けさに向かう。そしてその静けさは歌の主体にも沈む。──「この世界をまっすぐに見つめる」大前粟生(小説家・歌人)より



たくさんの不如意が織り込まれた歌集だ。愛しい人との距離、関係を名指すもどかしさ、理不尽に侵され奪われる命への心寄せ。なにより、それらをうたうための言葉が、どうやっても十全でないという不如意こそが、眞鍋さんの歌の芯にはある。……この歌人は遠くやさしく「あなた」に呼びかける。──「ながい一駅分の渚を」笠木拓(歌人)より



■目次


はじめまして/カウンセリング室のムーミン/おやすみなさい、ヴァージニア/ひかりあらしめる/こいびと未満/箱舟を見送る/一首詠たち(いちごつみより)

水ぎわへ/ナターシャの朗読

あなたは私の贖いだった/渾天すらも/一粒の麦

パレスチナへ/燃やせ詩集を/スペアと人魚/陸の潮騒/光零るる──珠洲にて
あとがき

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