『ペンギン村に陽は落ちて その他の短篇』 高橋源一郎

『ペンギン村に陽は落ちて その他の短篇』
高橋源一郎 / 講談社 / 文庫判並製 / 400P

異色短篇集『ペンギン村に陽は落ちて』は、小説家の父が小学生の息子に宿題として課された「しょうせつ」の書き方を尋ねられるところから始まる「序文」を冒頭に置く。
その問答を経て、息子は自分の「しょうせつ」でなければ書く意味がないと考えていることがわかり、自分の「しょうせつ」とは自分の好きなテレビの画面に映っていることを書くことなのではないかという考えに至る。そして父子はひたすらテレビに見入ることになる。
結局、息子はいくつものアニメ番組の断片的な感想しか書くことができなかったが、代わりに父親が画面を見ながら自動筆記的に記した文章を息子に渡す。それが『ペンギン村に陽は落ちて』に収められた各篇だという体裁であり、小説家の父親というフィルターを通してアニメが小説に変換される。
「ペンギン村に陽は落ちて」は『Dr.スランプ』の人型ロボット「アラレ」を『鉄腕アトム』のアトムに置き換え、科学の発展と人間の夢の関係を問う。
「愛と哀しみのサザエさん」ではまだ若い人妻のサザエさんがウルトラマンファミリーの入所する介護施設の職員となり、老いと性愛の問題を考えさせる……といった具合に、1970年代~80年代に人気を博しアニメ化された漫画作品のキャラクターたちの裏に潜んでいる設定を思わぬ方向に発展させることで、小説の登場人物にリサイクルしている。
そして、どの作品も人気漫画の持つテンポの良さと無責任なまでの破天荒さを湛えながら、奇妙な苦みをうっすらまとう、軽薄そうな外見と裏腹に奥行きを感じさせる深みと渋みを備えてもいる。
「その他の短篇」は1987年から2000年に文芸誌に発表された7篇の短篇小説。
「日本野球」「言葉」「正義」「ドン・キホーテ」「日本文学」「ゴジラ」など、作家高橋源一郎にとって重要なモチーフたちと本気で戯れた成果である。
本書に収められた14篇の短篇小説は著者と通念としての文学との格闘の成果であり、現在も色褪せず輝きを放つものである。

目次
ペンギン村に陽は落ちて
 序文
 ペンギン村に陽は落ちて――前編
 愛と哀しみのサザエさん
 いつか同時代カンガルーになる日まで
 キン肉マン対ケンシロウ――愛は永遠に
 連続テレビ小説ドラえもん
 ペンギン村に陽は落ちて――後編
  文庫版あとがき

その他の短篇
 愛のスタジアム
 ヒズ・ファーザーズ・ヴォイス
 「正義の味方」超人マン
 「善人」アロンソ・キハーノの遺言
 主婦仮面vsキャット・ウーマン
 二人友達が来て三時半まで飲んでしゃべっていった
 ゴジラ

 解説
 年譜
 著書目録

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