『焼死体たちの革命の夜』 中原昌也
『焼死体たちの革命の夜』
中原昌也 / 河出書房新社 / 四六判上製 / 224P
果てしなき崩壊のための言葉の閃光
病に倒れる直前までに書かれた短篇を集成。
時代の危機を先取りする崩壊感覚と、生のあり方を問う真摯さに貫かれた世界水準の作品集。
未来も勿論なく、あとはただ捨てられるだけのボロ布が、唯一の存在感を主張するに必要な揺れを演出する微風が、「誰か家賃を払ってくれないか?」のいなたいメロディと重なって小さなスピーカーから流れた。ささやかに、煤けたボロ布はなびいた。それは主張と呼ぶには、あまりにも小さな声。起こっても起きなくても、どちらでも構わないような、何事かが起きたとも言い難い、誰の感性にも認知されない音量の小ささだった。
ー本書より