『会社員の哲学』 柿内正午
『会社員の哲学』
柿内正午 / 零貨店アカミミ / B6判変型並製 / 93P
素人が哲学や政治や経済を語るという、本来まったく普通のことが、 異様なことのように捉えられるのは非常におかしい。僕は素人として、 いけしゃあしゃあと、生煮えの持論を振りかざしてみようと思う。あら ゆるイズムで簡単にわかった気になることもできる限り避けながら、自 分個人の生活から、これはしっくりくるなあという考えだけを頼りに、 いったん自分で考えてみたことを、素人臭い手法で書き進めていこうと 思う。この試みはまた、素人であることの肯定が、そのまま無思慮や専 門知の軽視を意味するわけではないということの表明にもなるだろう。 まず自分の手持ちの語彙で言葉にしてみないことには、より確度の高い 知識へのアクセスもできないんじゃないか。
自分の頭で考えるというのは、自分に都合のいい世界観だけに従順な生徒根性でもなければ、自意識過剰で安易な逆張り精神でもない。なんかもっとよりよく生きたいなーという、それ自体はなんの変哲もない欲求から始めてみることなのだと、僕は考えている。
それでは、町でいちばんの素人として、なるべく楽しい感じで、僕たちの生きるこの「世界」とやらを見直す試みを始めることにしよう。
(「はじめに」より)